11. 2021年から、未来へ

2022年1月19日

11. 2021年から、未来へ

リハビリの進捗に関係なく、容赦なく時間は進んでいきましたが、

2020年の後半あたりから、クローズドな会で演奏をする機会を少しずつ頂き、「本番」というリハビリも、徐々にさせて頂きました。

そして2021年7月、久しぶりの公開コンサートで、これまた久しぶりの「室内楽」を演奏する機会に恵まれました。

(3人以上の少人数アンサンブルを室内楽と言います。編成的には、ソロ→室内楽→アンサンブル→小オーケストラ→大オーケストラ、という順で、人数が多くなります)

室内楽というのは、一番人との繋がりを密に、深く、感じられる演奏形態です。

人と一緒に室内楽を弾くということは、コロナ禍で非常に欲していたことの一つで、久しぶりに「音楽をしている」と思えました。

10月には、思いがけず紀尾井ホールという大きな舞台で弾かせていただく機会もあり、秋にはちょうどコロナも少し落ち着いてきて、イベントが続くという、久々の嬉しい悲鳴もありました。

連続して弾ける時間は順調に増え、時折痛みを発症することはあるけれど、「弾いているのだから仕方ない。そして弾き続けなければ戻らない」と考えられるようになってきました。

リハビリのフェーズも、これまでにない度合いで上がっていくのを感じました。

例えばスポーツ選手は、どんなにトレーニングを積んでいても、怪我をすることがあります。怪我からの回復時の調整とトレーニングは、一番気を使うところではないでしょうか。

痛いからと言って必要以上に休んでしまったら、選手生命の危機となるでしょう。

私は、それをしてしまったようです。

音楽家も、怪我や痛みからの回復には、適確な対応が必要としみじみ感じます。

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2021年11月。2年振りのリサイタル。

コロナ禍でコンサートを自粛していらした方も多く、「久しぶりに生演奏を」と、沢山の方がいらしてくださいました。

ラボの先生には、今回も楽屋に寄っていただきましたが、それはもう「満身創痍だから」ではありません。より良いパフォーマンスをするために、必要なことをする。

必要であり、それが許される場であれば、楽屋に誰がいてもよいではないか、と、考えを改めました。

どんなに体の状態がよくても、やはり本番後は「もっとこうすればよかった」「もっと上手に弾けたはず」という思いは残りますが、今回は久しぶりに「やり切った」と思えるリサイタルとなり、演奏できる喜びを嚙み締めた日となりました。

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年齢とともに体は衰えるわけですが、私は、痛みが続くことにより極度に弱ってしまっていた体を、鍛えなおしています。

放っておいたら、おそらく本当に弾けなくなってしまったであろう体を、だんだんと建て直してきました。

どこまでいけば「元通りになった」と言えるのかは、わかりません。

なぜなら、すでに、今の理想は過去を超えているから。

元通りになっていたとしても、それは単なる通過点でしかないのです。

「過去の自分と同じように弾けるようになる」ことから、

「過去の自分を超える」に、目標が変わりました。

長い間、「再び出来るようになる」とは思っていなかったことが出来てきて、今は、色々な可能性が目の前に広がってきていることを、久しぶりに実感しています。

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フリーで演奏活動をしてきた私は、留学から帰国した当初はもちろん仕事がありませんでしたし、その後、仕事をいただけるようになってからも、月単位で本番が無いこともありました。本番がない時も毎日練習していたか?というと、そうでもありませんでした。アスリートなら考えられないことです。

頭では、それはまずい、と分かっていても、こうなってしまいました。 後に、教える仕事が増えてからは、忙しいのを理由に、練習時間は減ったままでした。

「音楽家の人たちって、一日中楽器を弾いているんでしょう? いいわねぇ」

と、音楽家でない人たちから言われることがあります。

実際は、そうではありません。

「弾く」以外の仕事が多い場合、仕事の合間に練習をします。

「弾く」仕事の割合が多い方の場合、それでも、「自分の練習」が出来る時間は限られてしまいますし、「弾く仕事」+「自分の練習」で、それこそ一日中弾いていたら、故障してしまう確率が高くなります。 どうやって時間や体調をやりくりして練習を続けていくかが、本当に重要です。

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ここまで私を導いてくれた、ラボの先生はもちろんですが、見守ってくだれた家族や、苦しい間ずっと応援を続けてくれていた方々、すべての方のお陰で、今私は歩けています。

よりよい音楽活動をしていくことが、恩返しになると信じて、これからも邁進していきたいと思っております。

ここまでのお話を読んでくださった皆様、長文を我慢してくださり、ありがとうございました。

これからも、より皆様の心に届く音楽を奏でていけるように、頑張っていきたいと思います。

​どうか、小林倫子をよろしくお願いいたします。

2022年1月 

小林倫子