8.2019年のリサイタルまで

2022年1月19日
8.2019年のリサイタルまで
さて、とりあえず治療が始まりました。
それまで、結構な数の鍼灸師さんにお世話になったことがある私としては、やはり他の方と比較してしまったりするのですが、すごく上手だなぁ…と。
やはり私の直観どおり、信頼出来る情報源だったのだな、と思いました。
何度か通ううちに感じたのは、施術後の「ふわふわ感」。
帰り道の足取りが、ものすごく軽い。
それまでに感じたことのないほど。
とはいえ、初めて伺った8月の頭からしばらくは、治療直後は良くてもまた悪くなったり、リハビリによって新たな痛みを作ってしまって回復が出来なかったりと、なかなか前進出来ない状況が続きました。次の予約はまだだけどSOS…ということも何度も。
後から聞くと「あの頃は本当に、いくらやっても体が変わってくれなかった」んですって。
(え、そうなの?そんなに?後から言わないでよ。いや、その時言われても困るか。)
翌9月には小さな本番が数回あり、それは無事に終えることができました。
そして、このまま行けばどうにかリサイタル は切り抜けられるかな、と思い始めていた、10月の終わりのこと。
あるリハーサルに参加したところ、その場では楽しく弾けたのですが、次の日から急に腕が怠くなり動かなくなってしまいました。(また、ですね)
リサイタルまで、1ヶ月を切ったところで、まさかの緊急事態・・・とパニックになりました。
ラボの先生に相談のメール。「とにかく不安なので、リサイタル当日に楽屋入りしていただけませんか」とお願いしました。
当日来て頂ける、と決まり、精神的に少し落ち着き、本番までの1ヶ月間は、腕にもたくさん鍼を打ってもらいました。
腕や手は、演奏家としては、必要がなければ鍼なんて打ちたくない場所です。鍼のせいで悪化してしまったヴァイオリニストの話も聞いたことがあります。肩こりラボでも、初めから腕に鍼を打っていたわけではありませんでしたが、ここに来て、腕の鍼は必須となりました。
正直、あの1ヶ月間のことはあまりよく思い出せません。毎日泣いていたことは確か。
普段、何があっても本番だけは上手くいく自信がありましたが、この時ばかりは、不安しかありませんでした。でも、先生に楽屋まで来ていただいて、それでも上手くいかないってことは絶対にないだろう、と言い聞かせる。
少しずつ少しずつ、いつもよりも期間をかけて練習してきたので、当日に体さえ動けば、演奏の内容には不安はありませんでした。共演者も素晴らしい方だったし、本来なら本番が楽しみになるような状況だったのです。
本当に、腕がちゃんと最後まで動くのか。楽器を持ち続けられるか。それだけ。
・・・
公演当日。
リハーサル、そして本番。
沢山の人の助けを借りながら、
沢山の人の想いを背負いながら、
この状況で、自分のすべてを出せるように、集中しました。
・・・
実は、このリサイタルの前の回、2017年の時のスピーチで、私は、いつも言う「これからも応援よろしくお願いします」という言葉を言うことが出来ていませんでした。
このまま弾き続けられるのかどうか、すでに悩んでいたから。
でも今回は逆に、「こんなに辛いのは初めてだし、もう嫌だ」と思いました。
治療家さんに楽屋入りしてもらわないと弾けないなんて、こんな状態は、私史上前代未聞だし、もう終わりにしなければいけない。
そんな思いから、今回のスピーチでは、未来を想像しました。
「これからも、よりよい音楽を奏でられるように、精一杯頑張ってまいります。どうか、応援をよろしくお願いいたします」
言うしかなかった。
そして、「絶対にパワーアップして舞台に戻ってくる」と決意しました。
そしてそのために、「引き続き肩こりラボに通って頑張ろう」と、やっと思えたのでした。